800年以上昔の佇まいを残す、伊豆で最古の木造建築
指月殿は、修禅寺門前を流れる桂川を越えた鹿山(塔の峰)の麓にある経堂。北条氏によって修禅寺に幽閉され、翌年暗殺された鎌倉幕府二代将軍源頼家の冥福を祈り、母北条政子が建立したという。鎌倉時代初期の木造建築であるが、800年以上に渡り風雪にさらされたとは思えないほど保存状態が良い。扁額は渡来僧・一山一寧による書だが、こちらは複製。本物は修禅寺宝物殿に展示されている。“指月”とは経典を意味し、禅家が愛用している不立文字を解く言葉。かつては鎌倉から送られてきた5~6千巻にも及ぶ大蔵経を収める経堂だったが、大部分の経本は散失。現在では、わずか8巻だけが残っている。そのひとつである「放光般若波羅密経・巻第二十三」は、巻末に北条政子の墨書が残されていることで有名。今は修善寺の宝物館に保存されており、実物を見学することができる。
珍しいお釈迦様を拝観した後は、源頼家のお墓参り
お堂の中心に置かれているのが、静岡県指定文化財に指定されているご本尊「釈迦如来坐像」。本来は持ち物がない釈迦像が蓮の花を手にしている、とても珍しい坐像だ。杉を中心にした寄木造りで高さは約2m。この種の像としては伊豆最大である。その両側に鎮座する阿吽二体の仁王像は、ご本尊よりさらに古く藤原時代の作。修禅寺の全盛時には、寺門の入口を守っていたとされている。ご本尊を拝観した後は、指月殿に向かって左側にある源頼家の墓を参ろう。手前の碑は、修禅寺16世筏山智船和尚が建てた供養碑。その裏側にある2基の五輪石塔が、頼家の墓だ。また墓前には、頼家に従って亡くなった侍臣達を供養した十三士墓がある。