昔の佇まいをそのまま残す、総石造りのトンネル
ブナやカエデの木々が自然のままに生い茂る山間に、ひっそりと佇む旧天城トンネル。夏でも中はひんやりと冷たく、昔の空気を今に残しているかのようだ。全長445.5mを誇る旧天城トンネルは、13年もの歳月をかけ1904年(明治37年)に完成。アーチや側面などすべてが切り石で作られていて、石造道路トンネルとしては日本に現存する最長のトンネルだ。総石造りの馬蹄形をしたトンネルの入口や内部は、非常に重厚な構えとなっているのが特徴。明治末期を代表する歴史的なトンネルであると評価され、2001年には道路トンネルとしては初めて国の重要文化財に指定された。
伊豆の踊り子の舞台が散策できる、ハイキングコースが人気
旧天城トンネルは、川端康成作「伊豆の踊子」の小説の舞台となった地。一帯は天城国有林が生い茂り、昔の情緒をよく残している。また旧天城トンネルは、浄蓮の滝と河津七滝を結ぶ全長16.2kmの「踊子歩道」の中間地点。現在は天城トンネルのおかげで天城峠を越えるのが楽になったものの、昔ながらのハイキングを楽しむ人たちも多い。浄蓮の滝から旧天城トンネルへと向かう途中には伊豆の踊り子の文学碑や、大正から昭和にかけて厳しい寒さを利用して天然の氷を作った氷室園地など、見どころが点在。トンネルを抜けるとその先は、物語にも登場するつづら折りの坂道が続く。そして名曲「天城越え」でも唄われている寒天橋をくだると、風光明媚な光景が楽しめる二階滝へ。さらに林道を進むと、河津七滝に到着。そのひとつ初景滝には小説の主人公たちの踊子と私の像があり、絶好の撮影ポイントとなっている。