国の平和、災害や災厄のない国家を願う国分寺、東大寺
ユネスコ世界遺産に登録される奈良の文化財の東大寺。保有する多くの美術品や建築物は国宝に指定され、文化的に大変価値の高い物に溢れている。日本一大きな伽藍を持つ金堂や大仏など、悠久の時を越えた歴史のダイナミズムを感じることができるだろう。
東大寺の歴史は、728年、その時代の天皇(聖武天皇)が、1歳にもならぬうちに夭折した息子(親王)のために建てた菩提寺(金鍾寺こんしゅじ)から始まった。その後、国の平和、災害や災厄のない国家を願う国分寺となり、さらに発展し国中の国分寺の頂点として東大寺の創建につながっていったという。
752年に完成された大仏、盧舎那仏の名は宇宙の真理を体得された釈迦如来の別名で、世界を照らす仏・ひかり輝く仏の意味。左手で宇宙の智慧を、右手に慈悲をあらわしながら、人々が思いやりの心でつながり、絆を深めることを願っておられると、言われている(東大寺HPより「東大寺の歴史」)東大寺は学問の場としても様々な宗派が集まり、開かれた学問道場としての役割も担っていた。
その後の災害による損害のみならず、戦乱により、二度の焼失による悲劇に見舞われた。そのたび、修復が繰り返されその美しい姿を保存する努力がなされ、1998年ユネスコ世界遺産登録を経て現在に至っている。
両端が空に向かってのびやかに反る美しさが人々を圧倒する南大門(国宝)、気品を持ちながら堂々とした重みと迫力を感じさせる大仏殿など、国宝や文化財を多く有し見どころは限りない。
見逃してはならない巨大な木像金剛力士像
見逃せないのが、南大門の両方の柱に安置されている高さ8.4メートルの巨大な木像金剛力士像(国宝)である。1208年に鎌倉期の天才仏師運慶、快慶と小仏師13人によって作られ、わずか69日で造られたという記録が残っている。風に流れる着衣の動きの瞬間が描かれ、堂々と立つ生き生きとした迫力ある描写。血管まで透けて見えるような見事な写実性。その力強い力士像は、鎌倉中世美術の傑作である。 広い東大寺にはカフェやショップもあるので、休憩を取りながらゆったり観光するのも楽しいだろう。