1300年前に春日大社を建てた藤原家の紋の藤の花は特別の美しさ
奈良公園内にある春日大社は、鮮やかな赤い社殿、回廊が美しい古代から続く社だ。春日山原始林の麓にある、緑美しい杉木立の中に佇む赤い姿は、遥か東にある神の国の神秘を思わせることだろう。ユネスコ世界遺産にも登録された美しい社殿は、壮麗かつ優美。神聖な場所として神をまつるにふさわしい姿である。
今からおよそ1300年前、奈良が都になったその時代の権力者藤原不比等は、国の鎮護と繁栄を願い、また、藤原家の氏神を祀るため、この春日の地に社を建てた。この新しい社に氏神を迎えるにあたり、藤原家の氏神が、鹿島神宮(茨城)から春日大社にやってきた際、白い鹿に乗っていたという言い伝えから、鹿は神の使いとして大切にされる風習が生まれたという。そのおかげで、奈良公園を始め春日大社周辺には、今なお多くの鹿が生息し、天然記念物に指定される野生の鹿でありながら、長い歴史の中で人との関係を友好に築き、共に生き、人々に愛され続けている。
一年を通して変わらぬ美しさを誇る春日大社だが、藤原家の紋でもある藤の花の季節は特別である。4月下旬から5月上旬、南門を入った左手、慶賀門(けいがもん)をくぐったところにある藤棚が花を咲かせる季節には、春日大社の華やかさが一層増す。その花が1mにも長く育ち、地面につきそうに咲くため「砂擦りの藤」と呼ばれる。この藤の木の歴史は長く、樹齢700年とも言われ、春日大社にかかせない大切な花とされている。
また、この季節に訪れるなら近くの萬葉植物園にも立ち寄ってみてほしい。古くから(万葉集の)歌人たちによって詠われた日本古来の植物が、自然な風情のなか育てられている。中でも園内にある「藤の園」では20種200本の藤が咲き、その様子は豪華そのものである。
春日大社では一年を通して1000を超える行事があるが、一般見学が可能な行事も多いので予定が合えば見てみよう。その中でも、8月と2月に行われる回廊内の特別参拝、中元万燈籠(ちゅうげんまんとうろう)は、2000基の石灯籠、1000基の釣り燈籠に火が灯されとても幻想的である。 最後は、運だめしにおみくじを引いてみよう。春日大社のおみくじは、かわいらしい鹿の人形が運命を告げてくれる。運が良くても、悪くても、鹿に免じてご愛嬌。また、春日大社裏手にある夫婦大黒社(ふうふだいこくしゃ)は夫婦円満、良縁祈願(すてきな恋人との出会い)のパワースポットとしても有名なので、訪ねてみるのも興味深いだろう。