都会に沸く天然の水、森、生き物の聖域
都心の自然といえば、人工的な庭園や公園が多い中で、等々力渓谷は都会にありながら、自然の姿が残りつづける稀有な渓谷だ。この渓谷は東京23区内で唯一存在する渓谷。1960年代に水量の低下と汚染が懸念されるが、地元保存会の熱心な活動が功を奏し、東京都の名勝に指定されるに至った。周辺エリアの宅地化が進む環境でありながら、等々力渓谷には今でも自然林が残り、天然の湧き水が見られ、また、多くの野鳥の生息地であり渓谷全域が鳥獣保護区となっている。川ではアユやドジョウなどの水の生き物も確認された。都会の喧騒を忘れ、この渓谷は様々な生き物が命をはぐくむ都会の聖域として生き続けている。
気軽に自然を楽しむことができる散策路
等々力渓谷は、中心に流れる谷沢川(やざわがわ)に沿っておよそ1kmの遊歩道が整備されている。初夏から夏への新緑が美しい季節はもちろん、早春の梅や春のさくら、秋には赤く色づくもみじなど、四季それぞれの情緒を楽しむことができる。1kmほどのウォーキングの途中には、ところどころに橋があり、湧き水や川のせせらぎ、滝の水音などを楽しみながら歩きたい。また、奈良時代前(8世紀前)ごろに作られたと推定される古墳や、平安時代(9世紀以降)ごろに創建された等々力不動尊などが古い歴史を感じさせ、スピリチュアルな空気が流れている。 2時間程度のウォーキングコースなので、都心にいながら自然に触れながらリラックスしたい気分の1日にちょうど良いだろう。近隣には人気のレストランやカフェも多いので、ランチやティータイムの後の自然散策など楽しいだろう。