岸壁に建てられた焼火神社
隠岐諸島の1つ、西ノ島にある焼火神社は焼火山の中腹、標高380mの位置にある。まず目にするのは岸壁にのめり込むようにして建てられた本殿だ。手前の拝殿と、本殿と拝殿をつなぐ通殿とともに国の重要文化財に指定されている。これらの社殿は1732年に改築、隠岐最古の神社となっている。社殿のそばに立つ巨大な杉の木など、その神秘的な空間は江戸時代の浮世絵師として有名な、安藤広重や葛飾北斎の版画「諸国百景」にも描かれるほどだ。
航海の神様として信仰を集める神社
隠岐への航海中に遭難しかけた平安時代の天皇、後鳥羽天皇がご神火で導かれたと伝えられ、海上の守護神として信仰を集めている焼火神社。旧正月の5日から島前の各集落が日を選んでお参りする「はつまいり」は現在まで伝承されており、今でもフェリーが西ノ島から出航するさいに警笛を鳴らすのは焼火神社へ航海の安全をお願いしているからといわれている。
天然記念物に指定された焼火山
焼火神社のある焼火山は標高452mで西ノ島の最高峰。登山道としても使用される参道は神域として守られ、多様な植物群を見ることができる。焼火山一帯は暖地性と寒地性の植物が同じ場所に生息している非常に珍しい場所で、1970年に「焼火神社神域植物群」として島根県の天然記念物に指定されている。1993年には神社から頂上までの遊歩道も整備された。山頂の展望台からは火山特有の外輪山の山々や日本で唯一、海になっているカルデラを眺めることができる。