市民に深く能文化が根付く類まれな島
佐渡では、日本の伝統芸能「能」が市民に浸透し、島の各地で盛んに上演されている。最盛期には島内に200の能舞台があった。今でも33の能舞台があり、この数は日本全部の能舞台の1/3にのぼる。佐渡は15世紀に、能の大成者として知られる世阿弥が配流された場所で知られるが、能が上演され、親しまれるようになったのは17世紀・江戸時代のことである。金山開発のために佐渡を訪れた徳川家康の側近が能を愛好し、二人の能太夫を同行したことがきっかけと云われている。佐渡の能の特徴は、民衆によって伝統が守られ、民衆が演じる事にある。本来、能は武士など特権階級が愛好するものであったが、島に殿様が存在しない、島全体が幕府の直轄地という、市民間に階級差が少ない土地柄で、誰もが能を愛好することができた。また、能舞台が民衆にとって身近な“神社”に多く作られ、神事となったことで、民衆と能の関係はより深まったと云われている。
幽玄の美を身近に楽しむ「天領佐渡両津薪能」
佐渡では、年間およそ20回の能が各地で上演されている。中でも椎崎菅原神社で行われる「天領佐渡両津薪能」は、神聖な薪の火にかざされ奉納される能の美しさと、年間上演回数も多いことで、市民や観光客に親しまれている。8月を除く5月から10月の間に、月に1度開催され、上演時間約1時間、リーズナブルな観覧料、全自由席、チケット予約必要なしという気軽さで本物の能を堪能できる。フラッシュ禁止、シャッター音を消すなどのルールを守れば一般客の写真撮影が許されている。また、神社内にはトイレもあり安心して能を楽しむことができる。