木造建築の黄金期に建てられた名建築
肱川(ひじがわ)流域随一の景勝地「臥龍淵」を望む約1万㎡の数寄屋造りの山荘。京都の桂離宮にも劣らない美しさから「大洲の桂離宮」とも呼ばれる。貿易商、河内寅次郎が余生をここで過ごしたいと、構想10年、工期4年を費やし1907年に完成した。京都や神戸から名大工が集められて建てられた不老庵、知止庵、臥龍院の三建築と、日本庭園、肱川の借景美が楽しめる名建築で、現在は有形文化財として一般公開されており、グリーンミシュラン1つ星を獲得している。4月~10月の日曜・祝日のみ、不老庵でお抹茶と和菓子を頂くことができる。
こだわりの数奇屋造り臥龍院
臥龍院は最も寅次郎が情熱を注いだ建物で、屋根は茅葺、農村風寄棟の平屋建て、全国で吟味した銘木が使用されている。臥龍院玄関の迎礼の間(げいれいのま)は質素さの中にも天井などに細工が施されている。清吹の間(せいすいのま)は夏向けに作られた部屋で、天井が他の部屋より高く、涼しさを感じさせる細工が見られる。神棚の欄間には春夏秋冬にちなんだ彫刻が施されている。壱是の間(いっしのま)は書院座敷で、丸窓、濡縁、障子戸、天井板などに桂離宮様式が取り入れられおり、畳を上げて能舞台としても使用された。欄間彫刻は優雅な野菊、鳳凰の透かし彫りが施され、柱から天井に至るまで細部までこだわり抜かれた工夫が見られる。霞月の間(かげつのま)は、違い棚を霞に見たて、掛け軸には富士山が描かれており、丸窓の奥には仏間があり蝋燭の明かりが灯されると月明かりのようになり、月に霞で霞月の間と名付けられた。随所まで匠の世界が感じられるこだわりの名建築を堪能したい。