リラックスしながら東洋古美術を味わう
東京の中でも、もっとも洗練され、ファッショナブルな人たちが集う街のひとつ南青山。 カルティエやクロエなど、ハイブランドショップが並ぶ通りのその奥に、根津美術館はある。竹林を思わせる長い直線の回廊に迎えられ美術館に入ると、そこには静けさがあり、穏やかな空気に満ちている。根津美術館は、リラックスしながら東洋古美術を味わうことができる都会の美術館だ。 ここでは、実業家・初代根津嘉一郎(1860~1940)が蒐集した日本・東洋の古美術品が保存され、展示されている。若いころから古美術に関心の強かった初代嘉一郎は、故郷山梨から東京に本拠を移すと、鉄道会社の経営だけでなく政治、教育界などで活躍し大きな成功を収めた。 そのころ、茶の湯にいそしむようになることから、美術品の収集にさらに拍車がかかり、その蒐集ぶりは豪快を極めたといわれている。そして、これらの所蔵品を個人で楽しむだけに留めず、「衆と共に楽しむ」という嘉一郎の遺志を継ぎ、1941年二代目嘉一郎がこれらのコレクションを展示、公開した。これが根津美術館の始まりである。 1945年、戦災により展示室や茶室など美術館の大部分を焼失したが、1954年に再建。その後も増築、改築を重ね、現在に至っている。 収蔵品は開館当時4643点であったが、その後の購入、篤志家からの寄贈などにより、現在、国宝7点、重要文化財87点、重要美術品94点を含む7414点が所蔵されている。ジャンルは絵画、書蹟、彫刻、金工、陶磁、漆工、木竹工、染織、武具、考古と幅広い。また、茶道具のコレクションも重要なものとなっている。 美術館は6つの展示室からできており、膨大なコレクションを入れ替えながら展示をするため、その時々で展示内容が変わる。入れ替え期間には2週間ほど休館日となるため、来館日には気を付けよう。ホームページ上で年間展示スケジュールと開館日が掲載されているので事前に調べておくと心配がない。 根津美術館は展示品のみならず、美しい日本庭園を所有していることでも知られている。 起伏のある広い敷地に石造物を置き、田舎風の茶室や家屋を配置したリラックスできる庭園である。四季折々の花や木に小鳥のさえずり、池の水音などを楽しみながら平穏な時間を過ごしてほしい。 庭園内にはカフェがあり、美しい景色を眺めながら軽い食事や、飲み物をいただくことができる。抹茶と季節の和菓子のセットもメニューに用意されているので、興味があればいただいてみては。 都会で過ごす休日に、きっと、いい癒しの時間が流れることだろう。