都会に残る江戸の大名庭園
旧芝離宮は、江戸時代初期の1678年に老中・大久保忠朝がここに屋敷をかまえ、1986年に作庭したことがはじまり。”楽寿園”と呼ばれたこの庭は、池を中心とした回遊式泉水庭園で、庭園を歩きながら風景の変化を楽しむことができる。当時は海に近く、池は埋め立てた土地に海水が引かれて作られた。庭は海岸に面し、広々とした海の眺望が楽しめる庭だったと言われている。庭園には、当時江戸の人々の憧れの的であった中国の風景を模したデザインを取り入れ、異国情緒をたたえ、その風景が今も見ることができる。現代では、さらなる海の埋め立てや高層ビルディングの建設などにより、その風景はすっかりと変わってしまったが、都会に残る江戸の庭園風景は、その後も大切に手入れ、保存され、その美しい姿が認められて文化財保護法による名勝指定を受けた。
庭園散策のたのしみ
旧芝離宮のみどころは、特徴あふれるガーデンオブジェだろう。池を中国の湖、西湖にみたて、中国風の提をかけた〝西湖の提“や、日本情緒を感じる雪見灯篭。様々な大きさや形の石を組み、荒々しい滝や山などの自然を表現した”石組”など。池の浮島には野鳥が生息し平和な空気をたたえる。植物は、一年を通して緑が美しいクロマツが随所に施され、一方で変化しながら四季折々に咲く花々が彩りを添える。春は桜、藤、夏は池の蓮やカキツバタ、秋の紅葉、冬にはぼたん、と季節ごとの風景を楽しむことができる。現在、池には海水は使われず、淡水となったため鯉が放され、江戸時代には見られなかった水辺の風景を楽しむことができる。