宮大工親子が魂を込めて完成させた意匠の五重塔
妙宣寺の五重塔は江戸時代後期に作られ、国内で22基しか現存しない貴重な五重塔の一つである。この五重塔は、宮大工・茂三右ェ門親子二代に渡り30年の年月をかけて完成された。高さ24.11m、一辺3.6m、下層から上層までの各層がほぼ同じ大きさで作られる江戸時代の五重塔の特徴を備え、意匠を凝らした竜頭の彫刻が美しく施されている。その姿は絢爛豪華な五重塔で有名な日光・東照宮の五重塔を模したといわれ、国の重要文化財に指定されている。
穏やかな風情の境内と文化財を巡る
五重塔のほかにも、境内には貴重な文化財が数々現存する。妙宣寺最古の建築物、1677年築の「仁王門」や、佐渡最大建築の「本堂」、15.5mの柱が見事な「庫裏」、アーチを描く渡り廊下が美しい「祖師堂」など、見るべき美しい建築が多く残っている。日本庭園の池には、夏には睡蓮の花が咲き、平穏な寺に彩りを添える。
佐渡の歴史ゆかりの人々が眠る古寺ならではの墓
「宝蔵」裏の墓所には、なだらかな斜面に点在する墓石が杉林の風景に溶け込むようにたたずんでいる。佐渡の歴史にゆかり人々の墓も見られ、最も古い墓は妙宣寺の開祖・阿仏房日得上人(あぶつぼうにっとくしょうにん)の墓がある。日得は、順徳天皇に仕え、天皇と共に佐渡に配流、崩御するまで側近く仕えた後に僧侶となり、のちに佐渡に配流されて来た日蓮上人に奉仕し弟子となった。また、鎌倉幕府転覆を計画した罪で佐渡に配流され処刑された後醍醐天皇の重臣、日野資朝(ひのすけとも)の墓も境内に見る事ができる。