境内の湧き水でお金を洗うと、そのお金が増える
お金にまつわる人々の夢は今も昔も変わらない。鎌倉の名所のひとつ、銭洗い弁天宇賀福神社は、境内の湧き水でお金を洗うとそれが何倍にも増える、というご利益で有名な神社だ。 鎌倉駅から徒歩25分ほどのところにその神社はある。この地は昔、隠れ里であったため、崖に囲まれた洞窟の中にあり、スピリチュアルな空気に溢れている。その洞窟には湧き水があり、用意されたざるの中にお金を入れ、その湧き水で洗うとご利益があるというのだ。 この言い伝えの始まりは、12世紀末に武家による政権を確立し、鎌倉幕府を開いた将軍、源頼朝が見た霊的な夢からである。1185年4月のある夜、老人が枕元に現れ、自分は西の隠れ里に住む宇賀福の神だ、(頼朝は)そこへ行き、その地の泉の水を汲み祈りなさい、すると世は平和になるだろう、と言ったという。言われた通りに、頼朝はそこで水を汲み、宇賀福神をまつると、やがて荒れた世もしずまっていったことから、ご利益のある神社として大切にまつられた。お金のご利益につながるエピソードは、その後の13世紀中頃に生まれた。時の権力者であった北条時頼が、この湧き水でお金を洗い、一族の繁栄を祈ったのが始まりだと言われている。 日本には、年や日付、時間などを、動物(生き物)にたとえた古くからの呼び方があるが、ヘビを意味する〝巳“ の、巳の年、巳の月、巳の日に頼朝が見た夢、という言い伝えから、今でも”巳の日“には多くの人が、ヘビの日にあやかってくるという。また、夢に現れた宇賀福の神は、顔が老人、体がヘビ、という姿というのも、”巳“=ヘビ、にかかわっている。 夢が叶うか、叶わないか、願ってみなければわからない。“洗ったお金はできるだけ早く使うとご利益が良い”や、“半分使って半分しまう”など諸説があるが、「洗ったお金はしまいこまず使う。」ことが基本であるらしい。そのお金がいつか巡って大きな利益になって戻ってくることを夢見て、古くから人々に大切にされた洞窟の持つスピリチュアルな空気を感じながら、銭洗い弁天神社でお金を洗ってみるのも楽しい経験になるだろう。