将軍争い最後の地
比企能員は鎌倉幕府2代目将軍、北条頼家の義父。北条氏とつながりの強かった比企一族は次の将軍をめぐって対立、争いに敗れこの地で滅亡する。妙本寺には比企一族の墓といわれる石塔が並ぶ。順当であれば3代将軍になっただろう一幡(いちまん)は6歳という年齢でこの世を去った。焼け跡から出てきたという一幡の袖は袖塚という五輪塔にまつられている。
山に囲まれた参道は歩くほど静けさが増す
妙本寺は身延山久遠寺、池上本門寺と並ぶ日蓮宗最古の寺。重厚感のある総門から杉木立の参道をのぼると二天門。仏教の守護神である四天王のうち、持国天と多聞天を安置している。正面上にある龍の彫刻の前で手をうつと龍が鳴き声をあげるという伝説が残されている。二天文背後にはノウゼンカズラがあり、夏には鮮やかなオレンジ色の花を見事に咲かせる。その先には鎌倉でも最大規模の木造建築といわれる祖師堂。江戸時代に建てられたもので日蓮がまつられている。境内にあるカイドウは鎌倉3大カイドウの1つ。薄桃色の花は春の訪れを感じさせる。カイドウが見ごろになると本堂前の枝垂れ桜も見ごろを迎える。イチョウの木は鎌倉市指定の天然記念物。紅葉の時期にはカエデとともに鮮やかな色をつける。人気の秘密は静寂。祇園山に面していて敷地も広く山深い雰囲気。山に囲まれた長めの参道を歩くほど静けさが増していく。鎌倉駅から徒歩10分で悲劇があったとは思えないほど静かで穏やかな時が流れている。