日本の中世、戦国時代に誕生した城「大野城」
四方を山に囲まれた大野盆地にある、249mの山「亀山」の頂に越前大野城はある。1575年に起こった一向一揆を平定し、その恩賞として土地を与えられた金森長近(かなもりながちか)は、ここに城を築き、町を整えた。築城以来290年の城の歴史において、城主は次々と変わり、幾度もの大火による焼失と再建を繰り返した。現在の天守閣は1968年に再建されたもので、内部は歴代城主の遺品や資料が展示されている。現存する遺構は石垣と堀のみであるが、石垣には「野面積み」(のづらづみ)という自然石をそのまま積み上げる工法が使われ、当時の面影を今に伝えている。
朝霧が作り出す雲海に浮かぶ大野城
山の頂にそびえる大野城の姿は、それだけで十分に美しい。しかし、この城が極めて美しい絶景へと変化する時がある。秋から冬の朝方に、放射冷却が起こり発生する濃霧が街を覆うと、大野城が雲海の中に浮かび上がる。年に10日ほどしか見られないという貴重な光景だが、ひとたび見れば心を離さない絶景である。しかし「天空の城」を見る条件は難しい。10月から4月末頃の明け方から午前9時頃、前日に雨が降るなど湿度が高い、前日の日中と翌朝の気温差が大きい、風が少ない、など諸条件が揃った時に天空の城は現れ、11月頃に最も多く出現すると言われている。城が美しく見える場所は、城の西1kmほどにある標高324mの犬山城址だという。「洪泉寺」(こうせんじ)山門から入山するコースが最も易しいが、山道は冬場は雪が積もるため、相応の靴や服装を心がけ、安全に出かけるように。