険しい山の斜面に開かれた仏教の世界
山と一体となった寺というイメージから“山寺”と呼ばれ親しまれているが、「宝珠山立石寺」(ほうじゅさんりっしゃくじ)が正式名称である。860年、天皇の勅願により慈覚大師円仁によって開山された天台宗の山で、立石寺中堂を含め5つの国指定重要文化財があり、国の名勝・史跡に指定されている。山寺の持つ独特な自然景観を生かして配置された史跡群は、聖域を感じさせる空気に満ち溢れている。その神秘性から、東北にある古刹、平泉中尊寺・毛越寺、松島瑞巌寺とともに「四寺廻廊」と呼ばれる巡礼コースにも入っており信仰の対象にもなっている。
奇岩の斜面に建つ数々の史跡
岩壁に建てられた山寺の寺院群を参拝するには、800段を超える石段の登山道を登らなくてはならない。冬場は雪による足元の悪さもあるため、参拝にはふさわしい靴を選ぶことを忘れずに。楽ではない登山道も、階段を上りたどりつく寺や史跡など、古い建造物と自然が作り上げる美しい風景をみれば疲れを忘れることだろう。五大明王を祀って天下泰平を祈る道場「五大堂」からは、眼下に広がる壮大かつ風光明媚な展望が広がり、その風景は感動的である。
俳諧師松尾芭蕉と山寺
世界で人気が高まりつつある日本の俳句だが、近世の俳諧師松尾芭蕉が立ち寄り、俳句を書いたゆかりの場所としても山寺は有名である。東北各地を旅しながら執筆された代表作「奥の細道」では、山寺に立ち寄り傑作を残した。芭蕉ゆかりの句碑や「蝉塚」では、芭蕉の描いた世界観を堪能できるだろう。また、JR山寺駅から徒歩8分のところに「山寺芭蕉記念館」があり、芭蕉ゆかりの品々が展示されている。