日本最古の総合的な博物館
春には一面の桜並木でおおわれ、夏には緑が深くなり、池でボートを浮かべてくつろぐ、噴水を眺めてベンチで語らうなど、人々の憩いの場所である上野恩賜公園。その公園内には多くの重要な施設が点在する。劇場、美術館、動物園、科学博物館、そして、その中でも大きな面積を占め、およそ11万件を超える文化財コレクションを所蔵する東京国立博物館がある。1872年に湯島聖堂の大成殿で開催された博覧会をスタートに、日本最古の総合的な博物館として、日本を中心に東洋諸地域に及ぶ文化財を収集・保管し展示している。その中には国宝89点、重要文化財639点を含む(2017年9月現在)、規模、質ともに極めて重要な価値を持つ日本を代表する博物館だ。
本館の1階は彫刻、金工、漆、陶磁、刀剣などの工芸美術品などがジャンル別に展示されている。2階の日本ギャラリーでは、紀元前に作られた土器や、はにわなど黎明期のコレクションから始まり、奈良で花開いた飛鳥時代の仏教美術、平安時代の宮廷文化、武士の時代の禅や書、中世戦国時代の甲冑、茶道具など、時代の移り変わりと共に変化を遂げ、成熟を重ねた日本の文化が本物の作品と共にわかりやすく展示されている。
法隆寺宝物館では、奈良にある世界遺産法隆寺から皇室に献納され、後に東京国立博物館に移管された、7世紀、8世紀の古代仏教美術のコレクションとして価値の高い宝物が数多く展示されている。その他にも、2013年にリニューアルオープンした東洋館「アジアギャラリー」では、中国、朝鮮半島、東南アジア、西域、インド、エジプトなどの美術と工芸、考古遺物が展示されている。
一日ですべてを回ろうと思えば時間は足りないだろう。しかし、日本美術ファンならずとも、この博物館を訪れることで、より深い日本を知っていただけることだろう。日本人が生活や時代の変化の中で成熟させ開花させてきた文化や価値観を「本物」から是非実感していただきたい。