富士の自然が育んできた清き湧水に触れる。
富士山の伏流水に水源を発する8ヶ所の湧水池「忍野八海」。山梨県の南東部、富士北麓に位置する忍野村にある。かつては、忍野村全体が宇津湖(うつこ)と呼ばれる巨大な湖だった。しかし、西暦800年の富士山の大噴火の際、宇津湖は流れる溶岩によって2つに分断。こうして忍野湖と山中湖が誕生した。長い年月を経て忍野湖は枯れてしまったが、富士山の伏流水に水源を発するいくつか湧水池は今もなお現存。その代表的な湧水池が忍野八海である。富士山の雪解け水が、地下の溶岩の間で約20年の歳月をかけてろ過され、湧水となって8つの泉を形成。1934年には形状、水質、水量、保全状況、景観、仏教思想(富士信仰)など」の観点から、国の天然記念物に指定。また、2013年には、世界遺産富士山の構成資産の一部として認定されている。
雰囲気も水の色も異なる、8つの水景を堪能しよう。
出口池、お釜池、底抜池、銚子池、湧池、濁池、鏡池、菖蒲池の8つの泉からなる忍野八海。中でも有名なのは、湧池だろう。湧水量も豊富で、地底の溶岩が見通せるほど透き通っているのが特徴。一方で鏡池は濁った水ではあるが、水面に映る美しい「さかさ富士」を拝むことができる。八海の中で一つだけ離れた場所にある出口池は、最も面積が広い池。周囲に売店などもなく観光客も少ないため、最も自然的な姿を見ることができる。また、富士登山の際に出口池の水を携帯すると、無事に登山することができるという言い伝えがある。八海の水は直接飲むことはできないが、水汲み場でペットボトルなどに汲むことが可能。富士山の雪解け水はミネラルが豊富で、全国名水百選にも選ばれている。