江戸時代から続く由緒正しい寺町の古刹
盛岡中心部から北東にある「北山地区」は、周辺地域に20軒余りの寺院がある江戸時代から続く由緒正しい寺町である。その中でも最も有名な寺院のひとつ「報恩寺」は、1362年に開山、1601年に現在の場所に移転され、今に引き継がれる長い歴史を持つ曹洞宗の禅寺だ。荘厳にそびえる山門、境内には梵鐘、蓮華八角柱塔、羅漢堂など史跡が建ち、中でも一番の見どころと言える「羅漢堂」には、499体の羅漢像が安置され静かな威厳を放っている。本堂裏手には広い座禅堂があることでも有名で、近代の詩人で童話作家の宮沢賢治も参禅したと言われており、同じく詩人で歌人の石川啄木も、若かりし頃にこの界隈の風情を愛し、友人と共に訪れては散策を楽しんだといわれている。
京都からはるばる運ばれてきた500体の羅漢
境内にある「羅漢堂」には、現存する499体の羅漢像が安置されている。「羅漢」とは仏教では、修行者の到達しうる最高位の事をいい、供養を受けるに値する仏弟子や聖者を意味する。羅漢像の制作は1731年から4年間の歳月を費やされたが、すべての像が9人の仏師によって京都で制作され、長い道のりを経て、この地に納められた。その際、運搬に使用された箱は台座として使用されるなど興味深い逸話もある。全国でおよそ50例の羅漢像が確認されている中で、木彫りで499体が現存し、年代や製作者までもが明らかになっている大変貴重な羅漢像である。499体の羅漢像の中には、マルコ・ポーロやフビライ・ハーンの像も含まれており、様々な表情を浮かべる羅漢らはふたつとして同じものはないと言われている。