六義園
美の世界を追求すべく、競い合って造り上げたといわれる大名庭園のひとつ。中でも六義園は「回遊式築山泉水庭園」といって一か所にとどまらず、園内をまわりながら景色の移り変わりを楽しむ庭園。どこから見ても美しい風景になるよう緻密に計算されているのだ。特徴は「和歌」をもとに風景が作られていること。文学的知識の深かった大名、柳沢吉保が自ら設計・指揮。和歌「万葉集」「古今和歌集」で詠まれた景勝地を88か所再現した。六義園八十八鏡としてそれぞれの地に石柱を立て、現在は33か所に残っている。平たんな土地に池を掘り、山を築き、川を作る。完成に7年もの歳月を費やした。
季節ごとの景色
そのこだわりは季節ごとに景色が楽しめることでもわかる。春は桜、初夏はつつじ、梅雨にはあじさい、秋には紅葉、初春は梅や椿。特に六義園はつつじの名所だ。江戸時代の園芸ブームで数多く植えられ、当時と変わらない形で現在まで残っている。最寄の駒込駅にも見事なつつじが咲き、5月の連休にはつつじ祭りも開催されるなど「つつじの花の咲く街」として駒込は有名。昔の人は少し歩いては休み、1日かけて園内をまわったという。変化に富んだ景色はまるで全国を旅しているようだ。散策のあとは吹上茶屋で休憩を。富士山や金閣寺などと並んで国の特別名勝に指定されている六義園。庭園をゆっくり眺めながら歩く。それが何よりの贅沢。