ゆっくり進んで入り江を巡る10分間たらい舟の旅
佐渡南端の港町・小木では、町発祥の小舟「たらい舟」体験ができる。中でも「矢島体験交流館」のたらい舟は、波の静かな入り江、朱塗りの太鼓橋、矢島・経島の自然豊かな景勝が楽しめる。ゆっくりと進む「たらい舟」は、小さいが安定感があり、たらいで海に出る不思議さも愉快だ。およそ10分の短いクルーズだが、素朴な佐渡民謡のBGMも心地よく、女性船頭さんとの会話を楽しみながら、優雅な気分で入り江を巡ることができる。晴れた日には水底まで透き通るクリスタルのような海が広がり、小舟ならではの近さでその美しさを堪能できる。船頭さんにお願いすると舟漕ぎ体験もできるので、声をかけてみては。
港町・小木で生まれた「たらい舟」の秘密
「たらい舟」は、まさに“たらい”から生まれた小型の舟だが、その誕生には物語がある。1802年江戸時代後期に起きた佐渡小木地震により、この一帯は地形が大きく変化した。多くの岩礁と入り江が生まれ、その地形に合うアワビやサザエなどの貝類や海藻類が豊富になった一方で、従来の舟では複雑化した地形に入れず漁が困難になった。そのような理由から洗濯用のたらいを改良し、櫂一本で操縦ができる「たらい舟」が誕生した。耐荷重量500kgを誇るたらい舟は、小回りと安定性に富んだ舟だ。
1周30分ほどの小さな散歩、矢島・経島遊歩道
「たらい舟」から見える朱塗りの橋や小島を散策することができる。入り江を囲むように整備された遊歩道からは、日本海の外洋や本土が見渡せ、赤い橋でつながれた矢島と経島の「箱庭のよう」と言われる、小島に自然がギュッと詰まった景観散策を楽しめる。