幕末から近代へ、繁栄を極めた豪商・齋藤喜十郎の屋敷
「旧齋藤家別邸」は、四代・齋藤喜十郎により1918年に建てられたもの。齋藤家は、江戸時代には酒造を営んでいた家柄で、19世紀幕末から20世紀にかけて、海運業や銀行業に進出し、やがて新潟屈指の大財閥に発展した。総敷地面積4300㎡を超える広大な土地に建築されたこの邸宅は、庭園と共に、「近代和風建築の秀作」として、国の名勝に指定されている。
近代和風建築の粋を尽くした開放感あふれる夏の別邸
旧齋藤家別邸は、夏の別荘として建築されたことから、涼を取るための様々な工夫が凝らされている。1階と2階の高さを十分に取り、庭に向かって大きく作られた開口部は、風の通りがよいだけでなく、庭の眺望が大胆に開け、屋内の風景と一体となり目に清々しい。2階は大広間になっており、柱を始め、使用される木材が、建物の規模に対し細くシンプルにデザインされ、広々とした空間を生み出している。美しい欄間や建具など、細部にも意匠が凝らされ、建物に優雅さを添えている。
海岸に近い砂丘の地形が生かされた回遊式庭園
夏の別邸でありながら海沿いを避け、砂丘に隔てられた場所に作られた別荘。そこには、波音や潮風をかすかに感じるような穏やかな静寂が漂っている。砂丘という独特の地形を生かし、斜面を利用し造られた築山には、松やもみじなど、多彩な草木が植栽され、庭の中心に置かれた池が涼やかさを演出し、「庭園と建物を一体のもの」とする、室内から見る庭園の美が見事に完成されている。一方で、回遊式庭園ならではの、庭を巡る楽しみにも趣が溢れ、離れの茶室、滝など、様々な見どころに溢れている。