岩壁に建つ神秘の寺で“洞窟くぐり ”生まれ変わり体験を
空高くそびえる岩壁に、岩窟や洞窟がある「那谷寺」は、古代から霊地として崇められてきた。その信仰は、縄文時代(紀元前14000年頃 – 紀元前数世紀)からあったと考えられている。洞窟は“母の胎内”と考えられ、洞窟に入り祈ることで罪が洗い清められ、出るときには”生まれ変わる“と信じられていた。717年、泰澄法師が、夢に現れた千手観音の姿を彫り、この岩窟内に安置したことが「那谷寺」開創の由来と言われている。現在でも、古代人が信じた”輪廻転生“の生命観や宗教観が大切にされ、本殿ではこの”胎内くぐり“体験ができる。
自然の美が生かされた「理想の極楽浄土」の境内
「那谷寺」の見どころは、独特な奇岩や、高低差のある地形を生かして作られた風景そのものだ。それは 「素朴な美しい自然に囲まれた世界が生かされた様子」を理想の浄土とした考えを基に作られ、整備された庭園でありながら、自然が息づく調和のとれた美しさに満ちている。広大な境内には、大池に岩壁がそびえる「奇岩遊仙境」、岩窟の中腹に建つ、美しい彫刻が施された「大悲閣拝殿」、”胎内くぐり“ができる洞窟がある「本殿」、その他、朱色が鮮やかな「楓月橋」や「三重塔」などが点在し、神秘的な風景を作り上げている。ハイライトは「鎮守堂」からの眺め。展望台となっている「鎮守堂」からの風景は、四季折々の花や木々に彩られた「奇岩遊仙境」を見晴らす那谷寺一の絶景と呼ばれている。その他、特別拝観(別途有料)の庭園「流美園」や、1637年に建造された建物「庫裡書院」は、重要文化財、名勝指定園に選定される貴重なもの。合わせて訪れたい名勝である。