「残したい日本の音風景」に選ばれたお囃子と掛け声の幽玄の祭り
夏の夜を幻想的に彩る大小様々の「ねぷた」が長い行列を作り練り歩く。「弘前ねぷた祭り」は、城下町弘前ならではの情緒溢れる夏祭りとして人気だ。祭りの由来は諸説あるが、夏の農作業を妨げる眠気や怠け心を流す「眠り流し」という農民行事から始まり、今では災厄や邪悪を水に流し送り出す祭とされている。国の重要無形民俗文化財に指定され、直径3・3mに及ぶ「津軽じょっぱり太鼓」が奏でる威厳ある響きとお囃子の笛、掛け声が作り出す祭りの音は「残したい日本の音風景100選」に認定されている。
様々な形のねぷたが繰り出す「弘前ねぷた祭り」
弘前ねぷたの特徴は、個性豊かな図柄や形の「ねぷた」が大小合わせて80基も街を練りあるくこと。その数は、東北一の数を誇る。「ねぷた」と呼ばれる巨大な灯籠は、勇壮な武者絵が描かれた扇形の物や人形を模した物など様々である。行列は伝統に基づき、津軽じょっぱり大太鼓がお練りの先陣を切り、各隊列は小型のねぷたから順に運行され、後に大型のねぷたが運行される。最大9メートル、総重量は数トンにも及ぶ大型ねぷた、それを引き回す男たちの雄姿は圧巻である。
祭りの最後を飾る行事「なぬかびおくり」
祭りの開期中は、弘前公園の朝市、弘前高校による「弘高ねぷた」、子供たちによる「ちびっこねぷた」など様々なイベントで町全体が盛り上がる。そして祭りの最後を飾るのが「なぬかびおくり」である。祭りの最終日に、岩木川の土手でねぷたを焼いて炎で清める。暗い土手に炎があがり、燃えながら消え行くねぷたの光景は、賑やかな祭りの最後をドラマチックに彩り、心に強い印象を残すことだろう。