石炭王の美学が詰まった邸宅
1890年以降、小規模炭坑による採炭しかおこなわれていなかった唐津炭田の開発が一気に進み、唐津炭田を近代化して杵島炭坑などの経営で成功し、「肥前の炭坑王」と呼ばれた高取伊好(たかとりこれよし)が自宅として1905年に建設した邸宅。海岸沿いの7,600 ㎡もの広大な敷地に大きく2棟の建物が建っており、約10年の歳月をかけて建設したと言われる豪華絢爛な邸宅。34部屋もの部屋数がある。近代和風建築の重要性と価値が評価され、現在は国の重要文化財に指定されている。英語、韓国語、中国語対応の音声ガイドのレンタルあり。
能舞台をしつらえたこだわりの邸宅
和風を基調としながら洋間を持つなど同時代の近代和風建築の特色を備える一方、大広間には能舞台を設けるなど独特のつくりになっている。植物の浮き彫りや型抜きの動物を施した欄間や、当時の西洋の最新のデザインであるアールヌーボー調のランプシェードなどには、儒学者の家に生まれ、西洋の技術を学んだ高取伊好の思想や教養が色濃く反映され、絵が描かれた杉戸絵、修復された洋間の漆喰天井などの優れた意匠を見ることができる。武家出身の伊好は豊かな教養を持ち、能をたしなんだことから大広間に建設した能舞台で、お客様や町内の人々に能を披露したといわれる。音響効果にも工夫した本格的な能舞台で、畳をはめ込んで宴会用座敷としても使用された。敷地内には家族風呂やワインの貯蔵庫も残っており、当時の暮らしぶりを今に伝えている。