桜を神木とした山岳宗教の残る神秘の山
春、山は薄桃色の霞がかかったように一面桜の花で覆われる。その山道を歩き、春のエネルギーを感じてトレッキングを楽しむ。吉野山の春は花に溢れ、山を歩きながら桜の絶景を楽しむことができる究極の花見の名所だ。 吉野山の桜群は古くからある山岳信仰と深い関わりがある。1300年前の平安時代に修験道の霊場として開かれ、桜の木に菩薩像を彫り寺の本尊として祀ったことから、「桜の木は神である」という信仰を持つようになった。そのため、桜の苗木を寄進することが供養として、山に多くの桜が植えられるようになったという。
いにしえの香り漂う歴史的建造物
神々が宿る“理想郷”と信仰された吉野山は、修行に身を捧げる行者らのためだけでなく、時の権力者たちをも魅了してきた。戦国時代の武将豊臣秀吉が1594年に総勢5000人を連れて行った花見のエピソードや、平安末期の悲劇の武将源義経の伝説も多く残る。価値ある建造物が多く残り、「金峯山寺蔵王堂」「吉水神社」「吉野水分神社」「金峰神社」は世界遺産登録され、自然あふれる山の中に点在する寺や神社は古の香を放ち美しい。山の自然と共に、一級の日本古美術を堪能することができる旅は格別だ。また、参道にならぶ素朴な地元の食べ物やみやげ物を選ぶのも楽しい。吉野山は4月の桜が最高の時期だろう。しかし、古くから”花の名所“と知られる吉野は、春以外の四季の花が楽しめる、秋の紅葉、冬の雪景色など、静かな季節にこそ、その神秘性を味わえる。