それぞれの時代の最先端技術により建てられた数々の建築
法隆寺は日本最古の木造建築を含む建築群一帯を呼び、歴史的価値、文化的価値の高さから日本で最初に世界遺産登録を認められた。
18万7000平方メートルの境内には飛鳥時代(7世紀)から残る西院伽藍を始め、その後の各時代の最先端技術により建てられた数々の建築が並ぶ。建築や宝物など、国宝・重要文化財に指定されたものだけでも約190件、点数にして2300点余りに及ぶ。黎明期の日本から国家が形成された初めての地として、607年の創建以来守られ続けたこの土地は、歴史的かつ文化的に極めて高い価値のある場所だ。
境内は、法隆寺のランドマークともいえる五重塔や金堂を中心に立つ西院伽藍、そして東伽藍には「夢殿」と呼ばれる六角堂がある。すべてが国宝級の秘宝だが、その中でも夢殿に安置されている救世観音は多くの謎に満ちた仏像として有名だ。江戸時代200年以上もの間、僧侶すら見てはいけないという秘仏として幾重にも白い布に巻かれ、しまわれていた。しかし、19世紀、近代化かつ西洋化を促進する日本において、失われていく日本固有の文化的遺産の保護のため、政府より調査以来を受けた美術史家岡倉天心とアメリカ人アーネスト・フェノロサにより発見され、祟りを恐れる僧らの反対を押し切って開帳に至った。なぜ、人を救済するはずの仏像が隠され、恐れられたのかは諸説あるが謎のままである。現在、国宝救世観音は春と秋に期間を限定して公開されている。 一方、法隆寺にはかわいらしいお守りがある。救世観音が安置されている夢殿にちなみ、夢、と書かれた小さな守りがあるので、かなえたい夢がある人は。是非、探してみてほしい。
いにしえのロマンとミステリー溢れる法隆寺だが、その場所は決して華美ではない。きらびやかに飾らなくとも、古代の持つ無駄のない美しさが放つ空気(雰囲気、情緒)は清廉で大らか。春の桜や秋の紅葉も美しいが、晩秋から冬の寒さの中で聞く法隆寺の鐘の音は、どこか侘しく美しい。1400年の歴史を誇る法隆寺で悠久の時を超えたロマンを感じてみては。